渋谷簡易裁判所 事件番号不詳 決定
主文
申立人に対する昭和二十九年十二月二十五日以降の刑の執行は不当であることを認める。
その余の請求は却下する。
理由
刑事訴訟法第五〇二条に基ずく執行に関する異議の申立について、受刑者土田和男は窃盗被告事件につき昭和二十八年二月二十三日渋谷簡易裁判所において懲役一年二月、未決十五日算入、訴訟費用は全部負担の判決を受け、これに対し土田は昭和二十八年二月二十五日控訴をなし、同二十八年六月八日東京高等裁判所に於て控訴棄却(未決三十日算入)の判決宣告を受け、これに対し上告をなし、同年十一月二十八日最高裁判所に於て上告棄却の決定を受け、同年十二月八日より刑の執行を受けたものであるところ、第一審判決原本には懲役一年六月と記載されていたためこれが執行にあたり検察官は同判決原本通りの執行をなしているものの如くである。
然るに判決の効力はその言渡に依って効力を生ずるものであり、判決原本記載によって効力を生ずるものではないことは明らかである。そして判決の言渡しが懲役一年二月であることは渋谷簡易裁判所廷吏作成の出頭カード、裁判所書記官補記載の公判期日簿、渋谷警察署巡査作成の被押送者名簿、同受付簿並びに渋谷区検察庁検察事務官作成の執行原簿によって立証されている。
然るに土田和男は昭和三十年二月十一日前橋刑務所より仮出獄仮釈放せられ、現在白紙の状態にあるものであるが、同人の刑の執行は昭和二十九年十二月二十四日終了したものであるから、同年同月二十五日以降の検察官の刑の執行は不当であるといわなければならない。その余の請求については別紙被告人の申立書記載の通りであるが、然し刑事訴訟法第五〇一条にいわゆる「判決の解釈について疑があるとき」とは判決主文の趣旨が明瞭でなく、その解釈につき疑がある場合のことであって、本件申立理由の如きは右の場合に当らない。
依って主文の通り決定する。
(裁判官 成田彦政)